◇砂利から基準超すフッ素
東証1部上場の鉄鋼メーカー・A社(名古屋市)が、渋川工場(群馬県渋川市)から出た有害なフッ素や六価クロムを含む「鉄鋼スラグ」を再生資材として業者に販売する際、販売額より高い費用を払っていたことが分かった。高額な処分費用を免れるため、「引き取り料」として支払っていたとみられる。こうした取引は「逆有償取引」と言われ、廃棄物処理法の適用を受ける。群馬県は27日、今回の取引について同法違反の疑いがあるとして同社を立ち入り検査した。
同社のスラグを砂利として使った渋川市内11カ所からは環境基準を超えるフッ素などが検出されている。
毎日新聞が入手した契約書によると、A社は2009年7月、A社の子会社を通じて同市内の道路用砕石会社にスラグを1トン100円で販売する一方、砕石会社に対し「販売管理費」として1トン250円以上(出荷量に応じて変動)を支払う契約を結んだ。
販売管理費は12年6月の契約更新でなくなったが、代わりに、砕石会社がスラグ入り道路資材を建設会社に販売する際、工事現場までの輸送費をA社が肩代わりするほか、資材の在庫置き場の賃料や事務手数料などとしてスラグ代金(1トン500円)より高い費用をA社が負担するようになった。
スラグなどを最終処分する場合、通常1トン当たり2万~3万円がかかるとされる。同工場では年間約2万トンのスラグが生じる。
A社は契約書の内容を認め、「販売代金より製造、運搬のコストが高くなる場合がある。鉄鋼スラグはリサイクル法で再生資源として活用に努めるよう義務づけられているので、この方法を採用している」としている。砕石会社の社長は「スラグは、建設業者に販売したり、敷地内に保管したりしている。お金の提供はA社からの申し出。うちはA社の指示で動いているだけ。リスクを抱えている以上、A社の負担は当然のこと」と話した。