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【土壌】関心高まる自然由来重金属汚染/土壌・地下水浄化技術展でもセミナー/相次ぐ大型開発見据えて/ゼネコンの技術開発も活発化(全国)

 今年度内にも工事が始まる見通しの中央新幹線、2020年の東京五輪開催に向けた開発工事などを見据えて、自然由来重金属類による土壌・地下水汚染への関心が高まっている。来月15日に都内で開幕する「2014地球環境保護・土壌・地下水浄化技術展」では自然由来重金属類による汚染対策をテーマとしたセミナーが開かれる。また、スーパーゼネコンによる関連技術の開発も活発化しており、今後の動向に注目が集まる。  

数多くの火山や温泉が存在する日本では、ヒ素などの重金属類が自然に分布しており、中には国が定める土壌溶出量基準を超過して検出されるケースもある。こうした自然由来重金属類は10年4月に施行された改正土壌汚染対策法で対象となり、適切な対応が求められている。今月1日現在、土対法に基づく形質変更時要届出区域1123区域のうち63件が自然由来特例区域として指定されている。

 一方、トンネル工事などで発生する岩石(掘削ずり)は、土対法の対象ではないが、土木研究所の「建設工事で遭遇する地盤汚染対応マニュアル」(暫定版)などに準じた対応が求められており、中央新幹線や東京五輪関連の開発などのほか、22年開業を目指す九州新幹線長崎ルート、35年開業を目指す北海道新幹線の新函館北斗から札幌間などの大規模工事が相次ぐ中、自然由来重金属類への対応に関心が一層高まっている。
 土壌環境関連の展示会としては2年ぶりに開かれる「土壌・地下水浄化技術展」でも自然由来重金属類に焦点が当たる。応用地質東北支社ジオテクニカルセンターの門間聖子副センター長が「自然由来の重金属等を含む岩石への対応」、富山大学の丸茂克美教授が「自然由来重金属汚染土壌・汚染地下水への対応」をテーマにそれぞれ講演する。門間氏は、自然由来重金属を含む岩石の特徴や対応方法について、丸茂氏は、道路工事や地下水調査で遭遇する自然由来重金属に起因する汚染土壌や汚染地下水の事例、汚染原因、対応策について話す予定。

 長大なトンネル工事など大型建設工事が相次ぐ中、建設業ではシールド工事における、とりわけ検出事例が多いヒ素を対象とした対策技術の開発が活発だ。昨年5月には大林組が京浜ソイルと共同で「シールド汚泥に含まれる自然由来ヒ素の浄化工法」、同年11月には鹿島建設が「シールドトンネル工事で発生するヒ素汚染土壌の浄化技術」、今年2月には清水建設が「泥水式シールド工事対応ヒ素汚染土壌浄化技術」を、シールド工事における自然由来重金属類対策技術として発表している。

 技術はそれぞれ異なるが、いずれも汚染土壌として外部搬出した場合、膨大な量となり、搬出費用、処理費用ともに高額になることから開発されているもので、ヒ素を吸着させるなどし、適正処理のため外部搬出する量を減らすことなどがポイントとなっている。

一律基準での判定に異論も
 なお、10年の施行から来年で5年を迎える土対法の見直しに向けた議論が来年度本格化する見通しとなっている。自然由来重金属類を巡っては、全国一律の基準で汚染の有無を判定することなどに対し、依然として異論が多く、自然由来重金属類の扱いの行方も注目を集めそうだ。

出典:2014/09/24付 環境新聞
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