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【大気】水銀使用 製品に明示 「水俣条約」新法で規定へ(全国)
水銀による健康被害の防止を目指す「水銀に関する水俣条約」の批准に向け、政府が策定する新法の概要が明らかになった。水銀を含む蛍光灯や電池などのメーカーに対し、水銀の使用状況を製品などに表示させる規定を設けるほか、水銀を輸出する際に国が使途をチェックできるようにする。政府は26日に召集される通常国会での法案成立を目指す。
蛍光灯や血圧計、電池などには、発光させたり、化学反応による膨張を抑制したりするために、水銀が使われているものがある。国内では水俣病の教訓から、水銀を使わない製品開発が進んでいるが、環境省の推計では、2010年度にも年間約8トンの水銀が製品に使われ、そのうち蛍光灯が38・1%、血圧計などの医療用計測器が23・8%、電池が12・5%を占めていた。
新法には、こうした製品のメーカーに対し、水銀の使用状況を製品自体や取扱説明書などに明示させる規定を盛り込む。消費者が水銀を使っていない製品を選びやすくするとともに、捨てる際に分別できるようにする狙いがある。今後、電化製品などに内蔵されている電池についても同様の措置を検討する。
環境省によると、世界の水銀使用量は年間約3800トン。このうち21%は、途上国の金採掘で鉱石から金を抽出する際の溶剤として使われているが、健康被害に直結しやすいため、条約ではこの方式での採掘の規制を求めている。日本からは水銀が年間約100トン輸出され、この一部が金採掘に使われていると指摘されていることから、新法では金採掘向けの輸出を禁じ、国が輸出業者に使途の報告を求められるようにする。政府は大気汚染防止法を改正し、大気中の排出基準も設ける方針。担当者は「日本がリードしてできた条約なので、国内で実効性の高いルールを整備したい」と話している。
〈水銀に関する水俣条約〉
2013年10月、約140か国・地域の代表らが参加して熊本市で開かれた外交会議で採択された。水銀の採掘や輸出入、水銀を含む製品の製造などを規制する。50か国が批准してから90日後に発効する予定で、これまでに米国など9か国が批准している。
出典:2015/01/06 東京読売新聞 朝刊